動特性とSN比を数式を使わずに解説します【入力と出力の比例関係】

品質工学

品質工学は、技術の開発において非常に有用な手法、考え方ですが、

「品質が欲しければ、品質を追いかけるな」

と言った言葉が物語るように、非常に特殊な手法なので、勉強をしてみてもどのように活用すれば良いのか、どう活用出来れば正しいのか分かりづらいところがあります。

そんな品質工学の中で、特に重要なのが動特性です。

通常会社で製品開発に携わり、品質問題ばかりに目を向けていると、この動特性は一体何を言っているのか、さっぱり分からない概念になります。

ですが、品質工学による開発を進めたいのであれば、動特性の理解は必要不可欠です。

という事で今回は、この動特性及びそのSN比の概念を数式を使わずに解説いたします。

もし、数式やもっと厳密な意味で知りたいという方は、こちらの書籍をご覧下さい。

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動特性とは?

目的機能と基本機能

動特性の話に入る前に、まず機能についてお話します。

機能とは、そのまんまその製品が持っている機能になります。

・歯ブラシの機能は、歯を綺麗にする事

・車の機能は、人や物を速く移動させる事

みたいな感じです。

そして、この機能と言うのは、目線によって2つに大別する事が出来ます。

目的機能基本機能です。

関西品質工学研究会のHPに記載されている内容をかみ砕くと、

・目的機能

お客さん目線の機能。車の目的機能は速く移動する事。これが守られるなら実は車である必要性はない

・基本機能

技術者目線の機能。車の基本機能は走る事。速く走る事で、目的機能である速く移動する事を実現できる。

この発想法は、以前紹介した品質機能展開表にも繋がります。

お客さんが求めているものは、何なのか。

それに繋がる機能は何なのか。

こんな事、言われるまでも無いという方もいらっしゃると思いますが、実際に日々の業務に追われている中で、そんな機能をアナタは正確に捉えられていると、自信を持って言えますか?

そもそも、日常の開発業務で相対するのは個別の不具合、個別の品質だったりする事が非常に多いです。

そして、その個別の品質を改善すると、トレードオフのように別の品質異常が発生する。

このようなモグラたたきから、更に高いレベルの開発へのステップアップが必要なのです。

その為の手法が品質工学であり、その品質工学を考える上で重要なのが、この目的機能と基本機能なのです。

目的機能から、品質展開表を用いて基本機能に分解した後に、肝心の動特性を考える事になります。

動特性 入力と出力

一つの製品、システムと言うのは以下のような図で考える事が出来ます。

信号をシステムが受け取って、何かの出力を返す。

当然に信号に対して、素直に(=比例する)出力する事が理想であるが、外部の変化によってはその理想が崩れたりもする。

例えば、コンロで考えてみます。

コンロはつまみを回すと、ガスが供給されます。

そしてガスの量に比例して、火力がアップします。

ですが、月日が経ち、コンロの内部が経年劣化したり、汚れたりすると、ガスの量に対しての火力が低くなります。

コンロの目的機能は、モノを温める事です。

コンロの基本機能は、供給されたガスを熱に変換する事です。

つまり、先ほどの図の横の流れ、入出力関係が基本機能になります。

そして、入出力をピンポイントではなく、複数の入力に対する出力の特性を動特性と言います。

グラフ状で動特性を表すと、こんな感じになります。

Mが入力で、yが出力になります。

外部の環境によって、N1やN2のように傾きが変動します。

ちなみに、入力Mの事を信号因子、出力に影響を与える外部要因を誤差因子と呼びます。

誤差因子条件の違いで、同じシステムでもN1やN2のように出力がばらついているのです。

さて、ここで問題です。

次のAとBの内、システムとして優れいているのはどちらでしょうか?

正解はBです。

Bの方が誤差因子による出力の変化が小さい、つまり安定しているからです。

このような文脈で読めば、そりゃそうだろうよと思う方もいらっしゃると思いますが、それでは普段アナタは仕事においても正しくそのように評価出来ていると自信を持って言えるでしょうか?

基本的にy値が高いほど、性能が良いと言われたらどうですか?

車言うと、速度が速いとかですよ?

速度を速くできる、Aのシステムを選んでしまうのではないですか?

基本的に新しいものを開発するという時、スペックを上げる方ばかりに気がいってしまいます。

つまり、動特性というものを意識しなければ、自然とAのシステムを良いシステムと判断してしまうのです。

ここが、品質工学が通常の開発手法と決定的に違うポイントの一つなのです。

動特性のSN比とは?

動特性は信号因子Mに対して、異なる誤差因子下での出力の関係を表したものです。

誤差因子は基本的には、出力が極端に大きくなるもの、極端に小さくなる条件を選定します。

両極端に揺さぶれそうな条件を選ぶのです。

ここまでデータが取れれば、SN比は簡単に出せます。

以下が式です。

$$η=10Log\frac{\frac{1}{nr}(S_β-V_e)}{V_N}$$

・・・ハイ、見た目訳わかりませんね。

今回は数式は深く掘り下げません。

SN比の本質だけ解説します。

SN比はN1、N2条件下による出力のばらつきを表しています。

SN比は大きくなるほど、安定しています。

つまり、Aの方がばらつきが大きいのでSN比が小さく(悪く)、Bの方がばらつきが小さいのでSN比が大きくなります。

これをややこしい式で表しているのです。

これが動特性とそのSN比のイメージになります。

このイメージを持っていれば、大分理解しやすいのではないでしょうか?

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なぜ動特性で考えるのか?

品質を見てはいけない理由

品質工学では、品質が欲しいなら品質を見るなと言われています。

何故なのか?品質を見なければ解決出来ないではないか?

その理由は、モグラたたきになってしまうというモノがあります。

例えば、懐中電灯で考えてみましょう。

懐中電灯の先端が、すぐ異物による傷がついてしまうというクレームがあったとします。

そうなったときにアナタならどうしますか?

異物がつかないようにする、とか、異物で傷がつかいないように頑丈にするとか考えると思います。

ここで、傷がつきにくい材質に切り替えたとしましょう。

めでたしめでたし・・・

とは、なりませんでした。

後日、たったの数日でヒビが入るというクレームが来てしまいました。

原因は、新材質が紫外線に弱く、数日で劣化して壊れやすいというものだったのです。

このように、単体の品質に注目していると、あーすればこうなるみたいな不良スパイラルに陥ってしまうのです。

品質ではなく、機能を見よ!

そもそも、不良の本質とは何でしょうか?

懐中電灯に傷がつく事?

いいえ、違います。

傷が出る事で、対象物をうまく照らせなくなることが不良です。

対象を照らすという機能を損なうから、クレームが来るのです。

逆に言えば、傷がついても対象が問題なく照らせていれば不良じゃないのです。

ここがポイントです。

先端にヒビが入っていると、おそらく明るさ(照度)が影が出来る分、下がっていると思います。

なので、信号因子を電力、出力を照度と取り、誤差因子として異物環境下とか紫外線環境下とかを取れば、安定性の高い製品になるかどうかが評価出来るのです。

照度だけに注目すれば良いという訳です。

ここで、動特性の有利な点は不良の想定をしなくても良いという点です。

お客さんが、どんな製品の使い方をするのかを洗い出して、組み合わせれば良いのです。

そして、お客さんの使う得る過酷な使用環境下でも、照度がばらつかなければ不良が出にくい製品になるのです。

これが、品質が欲しいなら品質を見るなの真意です。

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まとめ

品質工学による技術開発を進める上で、動特性とSN比の理解は必要不可欠です。

教科書では中々イメージが分かりにくいところではありますが、今回の記事で大分分かりやすくなったのではないでしょうか?

ぜひ、動特性での機能評価を取り入れて、丈夫な製品を作ってください。

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