アナタは実験をするときに、どんな事に気を付けていますか?
実験方法?サンプリング方法?
それらもそりゃ大切ですが、それらと同じくらいに大切なもの。
それが、測定システムです。
測定システムは、測定器だけでは成立しません。
測定者の技量、測定方法、測定サンプルのばらつき等の要因が絡み合って成立します。
これらの測定システム全体が、正しい測定が出来るレベルになっているかを分析する方法が測定システム分析(MSA)です。
以前、軽くMSA全体に触れ、またGR&Rも解説しました。
という事で今回は、MSAの偏りと安定性の分析方法を解説します。
調査方法自体は、基礎的な統計学の知識で出来るので、簡単ですよ
MSAの偏りと安定性
MSAって何だっけ?
復習がてら、MSAについて復習しましょう。
MSAとは測定システム分析の略で、次の5つを調査してその測定システムが問題ないかどうかをチェックするものです。
・偏り
・安定性
・直線性
・繰り返し性
・再現性
実は、基本的には大きく2種類に分類出来ます。
中心値の分析:偏り、安定性、直線性
ばらつきの分析:繰返し性、再現性
ばらつきの分析は、GR&Rという方法で一度に分析されます。
ただ、このMSAの知識がないといきなりGR&Rから始めたり、GR&Rのみをやってしまうという事をやってしまいがちです(ソースはワタクシ)。
GR&Rの方がMSAという単語より有名ですからね。
ですが、GR&Rつまりばらつきの評価に入る前に、実は中心値がちゃんと捉えられているかをチェックする必要があります。
そりゃそうです。
通常測定と言う行為は、複数回測定して、平均した値をそのサンプルの推定値として扱うのですから。
平均値の方が主役なんです。
だから平均値の評価で問題無い事を確認した上で、ばらつきの評価に入るべきなんですね。
偏りと安定性
今回は、その中でも偏りと安定性に関して解説します。
直線性は、結構難しいので、また別の機会に解説予定です。
まず偏りです。
偏りとは、真の中心値と実測値の中心値のズレを指します。
続いて安定性ですが、これは時間の経過での平均値のズレを指します。
偏りや安定性が異常をきたしていたら、そりゃ測定なんてままならないですよね。
偏りや安定性の異常は、測定器が校正されていない場合だけでなく、
・測定器の選定がそもそも間違っている(ケタが合っていないとか)。
・測定者のスキルが足りない
・測定方法が不適切
など、4M要因での不適合もあり得ます。
特に、1mm単位で規格が決まっているのに、分解能が1mmとかやってしまいがちです。
本来ならこのケース、0.1mmの分解能(つまり1/10)が求められます。
まずは、そういう分解能からチェックしてみるのも手です(厚みや長さとかでよくやりがち)。
偏りと安定性の調査方法
偏りの調査方法
それでは、それぞれの特性の調査方法を解説します。
まず偏りですが、こちらにはt分布を使った区間推定を用います。
真の値は、本では精密測定室で超ベテラン測定者にマスターサンプルを測った値を使えと記載していありますが、別にそんなんしなくても製品規格中心値とかで良いです。
10±5cmとかなら、
μ=10cm
と置きましょう。
次に、サンプルを測定します。
サンプルはマスターサンプルとしてN=1(ここ重要)。
そのサンプルを繰り返しで5回/日
そして、それを20日(土日を抜いた1か月って感じ)実施して測定データを蓄積します。
一つのサンプルを測るので、データがズレる場合は測定システムに問題があるのです。
そして、このデータを使って区間推定を実施します。
95%信頼区間にμの値が含まれていない場合、その測定システムは真の値を測定できない、偏っていると判定出来ます。
μ=10の場合、95%信頼区間が11≦μ≦13みたいだったらアウトって事です。
9≦μ≦11みたいだったらOKって事です。
安定性の調査方法
安定性は主に時系列での変化をチェックするので、Xbar-R管理図を使用します。
サンプルはマスターサンプルとしてN=1。
そのサンプルを繰り返しで5回/日
そして、それを20日(土日を抜いた1か月って感じ)実施して測定データを蓄積します。
偏りと違い、サンプルは複数個準備しても良いですが、その場合は規格の上下限ギリギリのものを選ぶと良いでしょう。
これらのデータで管理図を作ります。
UCL、LCLは係数を使った方法が有名ですが、煩雑なので単に平均値の±3σで良いです。
また、現場管理の時には、UCL/LCLから外れるかどうかだけ見れば良いのですが、今回のように分析用途として扱う場合は、8つのルールに照らし合わせて、何か異常の兆しが無いかチェックしましょう。
連続で上昇もしくは下降しているとか要注意ですよ。
異常が見つかった場合の対処法
これらの方法で、偏りや安定性に異常が見つかった場合は、
①人
②同機種の別の測定器(2号機とか)
③同品種別ロットのサンプル
④測定方法
⑤測定器の選定ミス
この①⇒⑤の順番で、一つずつ変えながら調査しましょう。
一気に人と測定器を変えて調査したら、どちらの要因によるものなのか分からなくなるので、一要因ずつ変えていきましょう。
各要因で3つ(3人とか3号機とか3ロットとか)程度調べたら、次の要因に移りましょう。
色々変えて分からなければ、まず測定方法や測定機種そのものといった根本がミスっている可能性が高いです。
この手順で調査すれば、せっかく分析したのにどうしたら良いのか右往左往なんてことは無いはずです。
まとめ
今回はMSAの偏りと安定性について解説しました。
MSAではGR&Rが有名ですが、そもそも一番見るデータは平均値です。
だから平均値の調査の方が優先順位は上です。
手法はGR&Rよりも簡単な、基本の区間推定や管理図になります。
異常が見つかった場合は、4M別で確実に原因を詰めていけば、きっと判明します。
こうしてチェックした測定システムを使えば、同じ実験でもデータの精度は格段に良くなって、統計的分析手法の適用も容易になります。
ぜひ、活用してみて下さい。
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