以前、工程能力指数(以下Cpk)を紹介しました。
その時に、両側規格のCpkには計算方法が2通りあると紹介しています。
実はネットで検索する場合、どちらか一方しか紹介されていないことも多く、一体どちらを使えば良いのか。
そもそも計算結果は一致するのか、誰か教えてくれぃと言う状態になっている方もいらっしゃると思います(昔私もどっちなんだと悩んだことがあります)
今回はそんな両側規格の2つの定義に関して、もう少し詳しく紹介いたします。
Cpk 両側規格の2つの定義
まずは、復習ということで2つの定義をそれぞれ再度紹介いたします。
定義1 Kを使った方法
$$Cpk=(1-K)Cp$$
$$K=\frac{|(UCL+LCL)/2-μ|}{(UCL-LCL)/2}$$
$$Cp=\frac{(UCL-LCL)}{6σ}$$
ただし、UCLは上限規格、LCLは下限規格、μは平均値、σは標準偏差です。
通常のCpでは平均値の偏りを計算に入れていないので、偏りの成分Kで補正することでCpkを算出します。
定義2 片側規格を使った方法
上限規格のみ及び下限規格のみを扱ったCpkの内、小さい方の値を採用する方法です。
$$Cpk=Min(\frac{(UCL-μ)}{3σ} , \frac{(μ-LCL)}{3σ})$$
さて、この2通りの両側規格の計算方法はどちらを使えば良いのでしょうか。
どちらの定義も計算結果は同じ
実はどちらの定義を使って算出しても結果は同じになります。
まずは、実際に計算してみましょう。
計算してみよう
UCL=40,LCL=30,μ=32,σ=0.5というシチュエーションで考えてみます。
定義1
$$K=\frac{|(UCL+LCL)/2-32|}{(UCL-LCL)/2}=\frac{|(40+30)/2-32|}{(40-32)/2}=0.6$$
$$Cp=\frac{(UCL-LCL)}{6σ}=\frac{(40-30)}{6×0.5}=3.33$$
$$Cpk=(1-K)Cp=(1-0.6)×3.33=1.33$$
定義2
$$Cpk=Min(\frac{(UCL-μ)}{3σ} , \frac{(μ-LCL)}{3σ})$$
$$Cpk=Min(\frac{(40-32)}{3×1.5} , \frac{(32-30)}{3×1.5})=Min(5.33 , 1.33)=1.33$$
以上両定義共に、Cpk=1.33という結果となりました。
展開してみよう
この結果は偶々ではなく、どの数字で行っても必ず一致します。
というのも、この二つの定義はアプローチが異なるだけで、共に同じ計算をしているからです。
この事実は式を展開していくことで見えてきます。
ということで、定義1を展開してみましょう。
$$Cpk=(1-K)Cp$$
$$Cpk=(1-\frac{|(UCL+LCL)/2-μ|}{(UCL-LCL)/2})×\frac{(UCL-LCL)}{6σ}$$
$$Cpk=(1-\frac{|(UCL+LCL)-2μ|}{(UCL-LCL)})×\frac{(UCL-LCL)}{6σ}$$
$$Cpk=(\frac{(UCL-LCL)-|(UCL+LCL)-2μ|}{(UCL-LCL)})×\frac{(UCL-LCL)}{6σ}$$
$$Cpk=\frac{(UCL-LCL)-|(UCL+LCL)-2μ|}{6σ}$$
ここで、絶対値を展開します。絶対値の中身(UCL+LCL)-2μが0以上か以下かで計算が変わってきます。
(UCL+LCL)-2μ>0の場合
$$Cpk=\frac{(UCL-LCL)-(UCL+LCL-2μ)}{6σ}$$
$$Cpk=\frac{(UCL-LCL)-UCL-LCL+2μ}{6σ}$$
$$Cpk=\frac{-2LCL+2μ}{6σ}$$
$$Cpk=\frac{μ-LCL}{6σ}$$
(UCL+LCL)-2μ<0の場合
$$Cpk=\frac{(UCL-LCL)-(-(UCL+LCL-2μ))}{6σ}$$
$$Cpk=\frac{(UCL-LCL)+UCL+LCL-2μ}{6σ}$$
$$Cpk=\frac{(2UCL-2μ}{6σ}$$
$$Cpk=\frac{(UCL-μ}{3σ}$$
このように定義1から展開していくと、定義の2式になります。
まとめ
以上のように、定義1と2いずれであっても計算結果は共通になります。
なのでどちらを使っても良いのですが、私個人のおすすめとしては
エクセル:定義1
手計算:定義2
です。
定義1は計算式を入力することが面倒ではありますが、一度入力してしまえばコピペで済みます。エクセルで定義2を実施すると都度どちらのCpkが大きいかを確認しないといけないので、逆に面倒です。
対して手計算の場合は、定義2の方が電卓で計算出来るほど単純なので便利です。
このように用途や計算手段に合わせて、使い分けていきましょう。
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