失敗をチャンスに変えるために

コラム

研究開発では新たな発見を得るために、日夜仮説の構築と検証実験を繰り返します。

何回も何回も実験をしては失敗を繰り返していると思います。

大学からそういったことを続けている人は、失敗との向き合い、成功に導く方法を各々が見出している事と思います。

しかしながら、他の部署から異動して経験がないのに研究開発職となった方はどうでしょうか。

もしかしたら、実験の失敗をうまく活かせていないいない方もいるのではないでしょうか。

最近私の身近でそのように、『失敗を活かせていない』同僚をよく見かけるのです。

ということで今回は失敗から成功へのヒントを見出す方法について解説したいと思います。

(研究開発でなくとも、この考え方は活かせると思います)

数字化する

最も重要なのは、実験結果を数字化するという事です。

ここでの数字化とは間隔尺度に落とし込むという事です。

実験のアウトプットを間隔尺度化すると、グラフや統計学による分析が可能となります。

「実験結果は数字で出るに決まっているだろう、何を言っているんだ?」

と思われるかもしれませんが、実はそうとは限りません。

企業における実験には間隔尺度でアウトプットされないものが数多く存在します。

代表例でいうと、JISの鉛筆硬度が挙げられます。

鉛筆硬度は測定対象に一定の荷重で様々な硬度の鉛筆(FとかHBとか)でひっかき、傷がついたときの鉛筆の硬度の番手を記録するというものです。

記録がHBとかF等の順序尺度であり、分析することが非常に困難です。

このような場合は、硬さを測る試験機、微小硬度を代替評価として導入すると同じ硬さというパラメータを順序尺度から間隔尺度に切り替えることが出来ます。

もちろん、順序尺度で観測された序列が対応しているか、試験方法から同じような負荷のかけ方になっているかを調べるのは当然ではありますが、このような

『今の測定方法/観測方法をより良いものに切り替える』

という発想は軽視されがちでありながら、実はかなり効果の高いものなのです。

レシピを再確認する

実験をして失敗をすると、出来上がった実験サンプルやアウトプットの数字にばかり目が行きがちですが、実はそれと同じくらいに実験の記録/レシピの見直しが重要です。

実験をするときには、何かをブレンドしたり、温度や圧力などの負荷を掛けたりといった条件を設定すると思います。

そして実験の際には、その記録を取ることになります。

実験を失敗したときには、この記録の確認が非常に重要です。

ラボレベルでは、小規模であるために計量や測定に高い精度を求めることが難しく多少ずれてしまうことが珍しくありません。

そしてこのずれが、思わぬ影響を実験結果に与えてしまいます。

私も部下が行った実験結果が予想と異なるものとなった場合、現物の確認とデータの検証以外に調合レシピの提出を要求し数字を照らし合わせたりしています。

その中で調合の微妙な計測のズレが実験に影響を与えていた事実を何回か見つけたことがあります。

実験が終わると、アウトプット側に目が行きがちになり、インプットは完全にレシピ通りに行われたと過信しがちです。

もし失敗した原因が分からない場合は、インプット側も見てみることをお勧めします。

グラフで傾向を探す

アウトプットを数字化し、インプット側の数字も押さえたら、グラフで傾向を見てみましょう。

簡単なのは相関図です。

実験数が少なくても、何となく傾向が見えてきます。

縦軸、横軸を色々入れ替えて遊んでみましょう。

実験のサンプルサイズが十分にある場合は、重回帰分析で要因の寄与率も見てみるのもいいでしょう。

ただ、この段階では注意点があります。

それは

『統計的裏付けは考慮しない』

ということです。

R2が十分でなくてもいいんです。

有意差が出なくてもいいんです。

この段階では

「もしかしたら、このような現象が起きているかもしれない」

というかもが見つければ十分です。

ここで重要なのは

『失敗した要因のヒントを見つける』

ということなのです。

仮説を構築し検証する

ヒントが見つかったら、それを元に仮説を組み立て検証する計画を立案します。

この段階では要因を大きく振って、アウトプットが大きく変動するように条件を組み上げます。

また、有意差検定などの統計的な分析に活かせるようにサンプルサイズなども設計します。

ここでまた失敗したら、またデータの見直し、仮説構築、検証を繰り返していきます。

こうすることで、失敗から最短速度で成功へと突っ走ることが出来るようになります。

失敗することが怖くなくなります。

むしろまた新しい事実を知ることが出来るとワクワクします。

 

これは実は他の業種においても同じだと思うのです。

失敗には必ず原因があります。

今までの成功体験と比べて、レシピに違いが無かったか確認してみましょう。

成功体験がないならば、成功体験を積み重ねている先輩に話を聞いてみましょう。

そこから違いを見出して、違いを振ってみましょう(お客相手でわざと失敗しにくいならせめて、成功体験と同じ条件を再現してみましょう)。

これを繰り返せば、少しずつ成功へと近づいていけるはずです。

 

 

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