統計を活かすには数値のデータが必要になります。
最近では色々な特徴を数値化し統計処理させる機械学習とかいうのが単語として流行っているみたいですね(私にはよく分かりませんが)
私のような材料を扱うような地方の中小企業の下っ端としては、機械学習とかいうインテリな代物は縁がありません。
しかしながら、そういうのを抜きにしても「数値化」することは仕事のレベルを上げるうえで非常に重要です。
統計学的には数量化という考えがあるのですが、今回はそのような専門的なものではなく、もっと身近な内容をお話させて頂きたいと思います。
曖昧な評価基準
開発や品質管理をやっていると、性能や品質を評価するということが非常に多いです。
評価の内容は基礎的なものだけではありません。
お客さんの要望だったり、クレームだったりから端を発した場合、それまでやったことがない、一般的でもないような評価方法をなんとか考え出して実施せざるを得ない状況ということも珍しいことではありません。
そのような場合、得てして評価基準はあいまいなものになりがちです。
・特定の試験方法を実施して傷がつくか否か
・ある角度からみて模様が見えるか否か
・光を当てて反射の具合を見る
以上のような極めて抽象的な評価基準というものが、結構まかり通ったりしているものです。
信じられないという方は、一度JISをご覧になってみてください。そのようなふわっとした評価基準が目白押しです。
このような評価基準が曖昧な場合の問題点は
・評価者が限られる
・人別で評価のレベルが異なる
という点です。
曖昧な評価基準は、最初に方法を決めた人や出来るようになった人が教えることでしか伝えることが出来ません。
教える時間が取れない場合はいつまで経っても評価者が増えませんし、その人が出張や体調不良で不在の場合は評価そのものが出来なくなります。
そして人別で評価のレベルが微妙に異なります。
人の五感や認識の仕方には個人差があります。同じ不良見本や現象を見ても、捉え方は人それぞれです。
また、記憶も人によって定着度が違いますので、一度目合わせしても時間が経つことで徐々に評価レベルが変遷することも考えられます。
私は一度曖昧な評価方法を考えて展開したことがあります。この時は目合わせもうまく進まず全部の評価を私一人が行うことになって本来の仕事が停滞してしまいました。
そのような状況を打破したのは評価基準の数値化でした。
数値化することによるメリット
数値化することによるメリットは
・評価者を簡単に増やせる
・目合わせは不要
・統計的分析が可能
というところです。
評価者を増やせる理由ですが、そもそも人に作業を教えるときに一番難しい点は何だと思いますか?
それは「判断」する作業です。
判断というものは、明確なルールがあれば簡単なのですが、ルールが難解な場合極めて難易度が跳ね上がります。
あるフィルムの合否判定において
・裏から光を透過させて、明るすぎる、または暗すぎると見えたら不合格
・裏から光を透過させて、その光の明るさを機械で測定し100~150から外れたら不合格
どちらの方が簡単かは火を見るより明らかです。
前者のルールを誰かに教えろと言われたら、どうしますか?
考えただけでもうんざりしませんか?
対して後者の方は、機械の使い方、光の当て方を教えればすぐに展開できそうではありませんか?
このように数値化には判断を容易にするという効果があるのです。
また同様の理由で目合わせも不要となります。後者の場合数値が規格に収まっているかを見るだけで済みますから。
また、統計的な分析が可能となります。つまり対象のフィルムの値を押さえてデータを蓄積することで傾向分析をすることが出来、ひいては品質改善に活かすことも可能となります。
このように数値化をすることで、評価は簡単かつ、様々な改善業務につなげることが出来るようになります。
数値化の注意点
数値化する上では、注意事項があります
まずは数値化とは間隔尺度で表すということを意識してください。
数値にすると言われると、よく聞くのがレベル表記です。
レベル1:傷なし
レベル2:多少の傷あり
レベル3:大きな傷あり
このような順位尺度では数値化したとは言えません。なぜならレベルの判断は結局曖昧なままですし、数値間の間隔も意味が特にないため、統計的に扱いにくいからです。
傷の場合は、顕微鏡で測定して傷の寸法やサイズで表すようにしなければなりません。
また、出来るだけ機械での測定値を使用してください。寸法などは、定規でも測定出来ますがやはり人の目を経由して測定するものは、人によってバラツキが生じる可能性が高くなります。
機械での測定値ならば、人によるばらつきも減り、機械の使い方さえ教えれば直ぐに誰でも使用できるようになります。
さて、数値化するメリットは分かって頂けたかと思いますが、それではどのようにして数値化すればいいのでしょうか。
これに関しては、分野や対象によって千差万別異なるので、これといった定説は出せないのですが、コツはあります。
そのコツは、現象の本質と向き合うということです。
傷のレベルとは、どのようなサイズの傷なのか
角度を変えると見える模様とは、そもそも光がどのように作用している状態なのか
反射の具合とは何か?波長が変わっているのか、光の広がり方が変わっているのか
このように、何気なく捉えている現象の本質を探ることで数値化のヒントが隠されています。
そして、数値化するうえでの考察の積み重ねは、そのまま会社のノウハウになるのです。
このように、数値化は中小企業にこそ必要であることですし、決して難しい理論も必要ではありません。
ぜひ一度今の評価体制に向き合ってみてください。
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