仕事というものは、作業ではありません。
問題、課題解決の連続です。
その為には、アイデアを作り出すというスキルが実は非常に重要です。
アイデアを思う存分作り出すことが出来れば、後はリスクとリターンを分析して実行に移していくだけで済むからです。
つまりアイデアを作り出すためのスキルというものは、研究開発や発明家特有のスキルではなく、仕事をするすべての人に不可欠なスキルと言えるのです。
以前、当ブログではTRIZによるアイデア出しの8つの観点を紹介いたしました。
ですが、このメソッドだけではおそらく壁に突き当たると思います。
なぜなら、この8つの原理を適用させるまで、問題を一般化する必要があるからです。
今回は機能という観点から、アイデア出しのツールを使えるようにする一般化について解説していきます。
なぜアイデアが作れないのか?
アプローチの仕方が間違っている
そもそも、なぜ我々はアイデアを作り出せないのでしょうか。
それは、問題の対象を具体論のままアプローチをしているからです。
アイデアにまつわる話として、振り酒のお話があります。
振り酒とは、お酒を振ってから飲むことで、味がまろやかになり、悪酔いもしづらくなる現象の事です。
実はこの現象、お酒の専門家の人たちが発見したものでは無いのです。
この現象を発見したのは、なんと写真家です。
その写真家は、お酒が好きで写真の旅で行く先々で、様々な銘柄のお酒を飲んでいたのですが、ある日同じ銘柄なのに、場所によって味が違うという事に気づきました。
普通は、場所によって気分が違うからと気にも留めないような問題ですが、その写真家は別のアイデアに行きつきました。
「写真の現像液も、よく撹拌すると仕上がりに違いが出る。もしかしたら、お酒も撹拌する事で味が変わるのかもしれない」
そこでお酒を振って飲んでみると、確かに味が変わったのです。
この現象をお酒の専門家たちに話してみたところ、一笑に付されたのですが、その後振ったお酒の分析をしたところ、実はアルコール分子と水分子の混合状態が変化していたのです。
この振り酒の現象は、今はアルコールクラスターという混合状態で知られ、お酒を長年熟成させた際に味がまろやかになる要因でもあります。
このエピソードの要点は、
・お酒の専門家はお酒の常識に囚われ、振り酒の現象に気づけなかった
・写真家は現像液とお酒を同じ混合液という一般的なものに捉えなおし、振り酒の現象に気づいた。
このように、お酒を単にお酒という具体的なものとだけ見ていると、いつまで経っても振り酒にはいきつきません。
アイデアを出すためには、対象を一般化する事が非常に大切なのです。
アイデア出しのテクニックは抽象的なものが多い
世の中には、様々なアイデア出しの方法論が出回っていますが、実はそれらは具体的な解決方法を提示するものではありません。
それはそうです。
この世には、無限とも思えるパターンの現象が存在するので、それらに画一的な解決法を提示するメソッドなどあろうはずもありません。
ですが、この世の現象は一般化する事で、ある程度カテゴライズする事が出来ます。
このカテゴライズされる種類というのは、実はそれほど多くないのです。
このカテゴライズされた状態に対して、アイデア出しの手助けをしてくれるのがTRIZの8つの発明原理です。
このように、メソッドを適用するためにも前処理として、一般化をしておく必要があるのです。
一般化でアイデアを作り出そう
具体論を抽象論に
一般化と先ほどから連呼していますが、とどのつまり具体論を抽象化しろという事です。
通常の問題解決とTRIZの問題解決のアプローチを図示すると、以下のようになります。
通常我々は、問題にぶち当たるとそれを解決する策、つまり具体的な事象に対して、即具体策を思いつかないか思案しがちです。
ナイスなアイデアを出すためには、それだと視野狭窄に陥るため良くありません。
そこで、一般化です。
・構造はどうなっているのか。
・本当の目的は何なのか
別の観点から、全体像を観察する事が大切なのです。
このように問題を具体論から抽象論に変換し、そこから抽象的な解決策を模索し、抽象的な解決策(つまりアイデア)に行きついたら、どうやってそれを具体化するのか思案していく。
この思考プロセスが非常に大切なのです。
機能という視点でとらえる
さて、では一般化とはどのようにすれば行えるのでしょうか。
そのポイントは機能という観点で考えるという事です。
機能というのは、端的に申せば、目的や働きの事です。
例えばモーターの機能を考えてみます。
・目的:何かを回転させたい
・手段:磁石の反発と吸引、電気による磁石の制御
以上2点からモーターの機能とは
電磁気学の法則を利用して、電力というエネルギーを回転力という仕事に変換するする事
だといえます。
このように、目的の仕事とその仕事をするための作業の応答関係を機能と呼びます(そしてこのように機能を導き出す事を機能分析と言います)。
機能という観点は、様々な技術手段の上位概念です。
この観点で見ると、電球と焚火は同じ機能を持つことになります。
電球:電気エネルギーを光に変換する機能
焚火:燃料の化学エネルギーを光に変換する機能
このようにアプローチは違いますが、2つともエネルギーを光に変換する機能であることに変わりありません。
つまり、機能という視点を持てば、膨大な数の事象を集約する事が出来るのです。
そして機能でカテゴライズ出来れば、同じカテゴリーに使われたアイデアを流用する事も可能となります。
機能を分析するコツ
問題を一般化する上で非常に便利な、機能という観点。
ですが、これが結構難しい。おそらく初見ではうまくいかないと思います。
という事で、ここから機能分析のコツをいくつかご紹介したいと思います。
①:前処理、主処理、後処理で考える
例えば、エレベーターですが、その機能は人を上下させるものと思われがちですが、それだけではありません。実は上下させる前に、人を箱に収める前処理段階と人を箱から放出する後処理段階が存在するのです。
アイデア出しをする際、実はこの機能を分解(サブ機能への分解)が出来ず事象がごちゃ混ぜになって、失敗する事が良くあります。
今考えている事象が、前処理、主処理、後処理に分解できないかを考えるのは、それぞれを単純に捉える上でも非常に重要です。
②プロセスを時系列で考える
例えば、LED光源で考えてみます。
あれは電気を流すと瞬間的に光っているように見えますが、非常に高速なだけで実は因果関係が存在します。
原因:電気が流れる
結果:光に変換される
このように時系列で分解する事で、機能を考えやすくなります。
③作業や構成要素の目的を考える
ダイレクトに機能が浮かばない場合、構成要素や作業の目的から逆に機能にアプローチするのも手です。
例えばある工程で、加熱、冷却の為に放置、取り外すという順番とします。
これらを機能に置き換えると
・加熱⇒軟化
・冷却⇒固化
となり、先ほどの工程は軟化⇒固化⇒取り出しという機能を果たしているという訳です。
このように、各プロセスを一つずつ機能に置き換えてみると、その工程が何を目的に動いているのか分かりやすくなります。
例えば、軟化させれば良いので、その手段が加熱でなくても良いという観点が得られる可能性もあるわけです。固化も然り、です。
まとめ
アイデアを作り出すことは、全ビジネスパーソンに必須のスキルです。
その上で重要なのは、有効なメソッドを適用する為に一般化するという事。
その一般化をする上で、有効なのが機能分析、つまり機能を考えるという事です。
機能を考えるコツとしては、
①:前処理、主処理、後処理で考える
②プロセスを時系列で考える
③作業や構成要素の目的を考える
の3つが挙げられます。
機能を抽出出来れば、自ずとアイデアを作り出す事も出来るようになります。
ぜひ、使ってみて下さい。
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