私は現在の会社に転職する前は、品質管理部に所属していました。
当時はクレーム対応や製造現場の見回りなど言われるがままに業務をこなしておりましたが、正直な話
品質管理とは何をする仕事なのか?
自分の中でどうも言語化出来ず、もやもやした状態で日々を過ごしていたことを覚えています。
日々仕事に追われていてどうにも冷静になれなかった、ということもありましたし。
なぜいきなりこんな独白を述べ始めたかと言いますと、同じような悩み(?)を抱えている人は、結構いると思うからです。
社会人として働く目的として、
「お金さえもらえればなんでも良い」
と口では言っている人もいると思いますが、そんな人たちも実際には
「日々自分は何かに貢献出来ているのか?」
という考えが頭の片隅にあるはずです。
人は金銭報酬以上に、人に認めてもらいたいという承認欲求の方が強い生き物だと言われています。
特に品質管理部というのは、クレーム対応、現場の見回り&指摘、現場への改善要求など人から褒められることが少ない(というか現場に嫌われる)上に、目に見える成果を出しにくい部署だけに「承認欲求不満」に陥りがちです。
承認欲求を満たすためには、
・自分で考えて
・現状より良くなる活動をして
・みんなに認められる
というプロセスが一番前向きというか、健全だと思います。
そのような活動を行うためにも「自分の仕事の目的(役割)」というものを正しく把握する必要があります。
良かれと思って活動しても、部署としての正しい動きでなければ職権逸脱になるからです。
という訳で特に目的を見失いがちな「品質管理部」の目的をここに記すことで、これを読んでいる品質管理担当者の一助になればと幸いという気持ちで、本記事を書こうと思った次第です。
前置きは以上ということで本題です。
品質管理部の役割とは?
品質管理部の役割、それは「同じ状態を維持する取り組み」だと私は考えています。
日々製造する製品の性能というものは、まったく同じ数値のものを作ることは不可能で、ある範囲(管理値)内に収まるように製造条件を決めて管理しています。
そんな性能を管理値に収めるためには、
・材料は同じ品質のものか?
・人のスキルは十分か?
・機械は正しく動いているか?
・製造条件は守られているか?
が十分に管理されている必要があります。(ちなみに以上の材料、人、機械、条件(方法)をすべてイニシャルがMであることから4Mと言われます)
これが生産するシステム側の目線の話です。
またもう一つ重要なのは、作られた製品のチェックです。
製品性能を破壊、非破壊のあらゆる検査、試験を実施することでちゃんとした製品が出来ているかを確認する必要があります。
これら「作るシステム」、「作られた製品」を常に同じ状態を維持するのが品質管理部の仕事です。
品質管理は嫌われやすい
このシステムと製品は実際には製造現場の手にあり、品質管理部はそれらに直接干渉することは出来ません。
品質管理は製造現場に干渉することで、間接的にシステムと製品に干渉することが出来ます。
さて皆さん、自分が料理を作っているときに、横で
・レシピ通りにやっているか?
・調味料の量少し多いんじゃないの?
・味少ししょっぱくない?
と手伝いもしないのに文句を言ってくる人がいたらどう思いますか?
当然腹が立ちますよね?
これはそのまま製造と品質管理の関係になります。
業務上どうしても、品質管理は製造に嫌われる宿命にあるのです。
また、品質管理はチェックするだけでなく、「より安定したモノづくり」を使命としていますので、「こういう条件でやってほしい」と製造現場に干渉してくるわけです。
そしてその条件というのが大体
・この検査項目を増やそう
・サンプルサイズをもっと増やそう
・作業方法をこのように変えて下さい
と負担が増えるものばかりというのがセオリーです。
横から口を出してくる上に負担をどんどん増やしていく輩。製造現場は品質管理の人間が大嫌いなはずです。
品質管理部門はどうあるべき?
品質管理部は製造現場に干渉して、仕事の邪魔をしている(ように現場からは見える)。
そんな部署はいらないのか?
そんなことはありません。品質管理は絶対に必要です。
製造現場は与えられた条件で、人と設備を整えて日々製品を作るのが仕事ですが、お目付け役がいないと固定概念や惰性での活動になり、異常の兆候を見逃しがちになります(茹でガエルの現象です)。
なので、外部から指摘する機関がどうしても必要です。
それではなれ合いもせず、かといってギスギスしすぎない関係を築くためにはどうすべきか?
ECRSの原則に乗っ取った提案をする
品質管理部の役割は「同じ状態を維持する取り組み」です。
決して「チェックを増やして異常への察知能力を上げる」に限るものではありません。
この視点から考えると、「不要な作業を削減して、必要な作業の精度を上げさせる」という活動も「アリ」のはずです。
不要な作業が無くなれば、残った必要な作業にかけられる時間、集中力を増やすことが出来ます。
それは結局人のミス削減につながり、「同じ状態を維持する」ことに一役買うわけです。
そしてこの手の改善の順番、視点としては
・排除(Eliminate)
・結合と分離(Combine)
・入れ替えと代替(Rearrange)
・簡略化(Simplify)
があります。
さて問題は、「不要作業の判断」をどうするかです
根拠には二つの見方がある
この判断は、2つの視点で考える必要があります。
技術的視点と統計的視点です。
技術的視点は、メカニズム上それは妥当かを考える視点です。これは技術部のテリトリーです。
対して、統計的視点は
「2つの検査は一見異なる数値を見ているが、実は相関関係があって一方を見ると事足りる」
「この作業の有る時と無い時で作った製品の性能に有意差は見られない」
といった、相関性や有意差上それは妥当かを考える視点です。これこそ品質管理のテリトリーです。
このような品質管理が得意とする(すべき)統計学という視点から、現場の負担減に貢献しかつ本来の役割も全う出来れば、承認欲求を健全に満たすことが出来ます。
まとめ
品質管理という一見褒められにくい部署でも、統計学で現場を分析すれば、現場に受け入れられやすい提案を創出出来る可能性があります。
また、このような現場が喜ぶ改善を提案出来るなら、決して喜ばれない提案をする場合でも
「以前に借りがあるから仕方がない」「お前が言うならそれが正しいのだろう」
と受け入れられやすくなります。
仕事と言っても相手は人間です。理屈だけでは人は動きません。
人情半分、理屈半分です。
このような現場寄りの提案を織り交ぜることで、現場との交渉材料を作り円滑に業務を運ぶことが出来れば、品質管理部も面白くなると思います。
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