これからどのように改善しようか。
その方針を立てる上で重要なのがデータ分析です。
顧客相手の場合は、主に顧客に対してのアンケートや売上など社外のデータが分析対象になります。
対して、製品の歩留(良品率のこと)を始めとした社内特有の問題を解決する活動を行う場合、社内データを分析する事になります。
社外のデータは中々自分達の思うようにはデータが取りづらいのですが、社内データの精度は社内だけで完結し得る分簡単な印象を受けます。
しかしながら、そんな社内データ、実はある意味社外データより厄介な場合があります。
というのも、社内データは油断するとすぐに抜けや漏れが発生してしまうのです。
データが取得できるタイミングというのは、その一瞬一瞬しかないことを考えると抜けや漏れのフォローというのはとても難しい。
今回は、
・なぜ社内データは抜け/漏れるのか
・社内データの抜けや漏れをフォローする3つの方法
を紹介します。
社内データは抜ける、漏れる!
社内データは分析しやすい?
社内データはとても分析しやすそうな印象を受けます。
そのような印象を受ける理由ですが、
・データ取得は社内で自己完結することが出来る
・データは後から見る為に取っているんだから、4Mを始めとした様々な観点で取ってくれている
と思っている(期待している)からです。
※4M:機械、人、方法、材料の英単語頭文字。主な変動要因として挙げられます。
決め事を決めたら、決められた通りにデータを取ってくれると思っているし、分析する為に取っているだから、4M別くらいは当たり前に分けているだろうと考えているから、社内データの取得は簡単であると考えがちなのです。
ですが、この考えが
そもそも間違っています!
データの採取は主に人の手によって行われます。
そしてそのデータ採取をする人たちは、データ分析についての知識や必要性というものを知らなかったりする人たちです。
いわばデータ採取の依頼者と実作業者の間に大きな乖離が発生している事が多く、この事実が社内データ分析を困難にさせる要因となっています。
まず、この乖離によってどのような問題が生じ得るか考えてみます。
分析を想定していないデータ採取
日常採取されるデータには、分析を想定していないデータ採取というものがあります。
例えば、寸法データなんかです。
合否の規格だけが決まっていて、その規格内に収まっているかどうかだけ検査する。
・ロットに対してOK/NGしか記録されていなかったり
・誰がいつ検査したのか残っていなかったり
と、このような事が平然と起こります。
これは測定を依頼した管理者が、データ分析に対しての知識が欠如している場合に発生します。
社内にデータ分析の文化が根付いていないと、このように合否のチェックだけしているというような情報しか取れなかったりするのです。
層が抜け落ちているデータ
依頼者や管理者がデータ分析の知見を持っていたとしても、層が抜け落ちている場合というものがあります。
例えば、ある日の15:00に生産されたロットが寸法異常を起こしていたとします。
15:00付近の作業データが欲しいのに、日別のデータは取っていてもデータ採取の時間帯は記録していなかったからよく分からなかった、というような場合もあるのです。
このように、データ分析を認識している依頼者/管理者であっても、将来的にどのような不具合やデータの必要性が出てくるのかは予想がつきません。
また、データの情報量が増える度に測定者の負担は増加します。
今まで日付だけで良かったものが、何時にデータを取ったと記録する分作業量が増えるのです。
この測定者の負担を増やすという行為は、次の項で説明しますが、かなりリスキーな判断なのです。
軽はずみに色々なデータを取りなさいと言えないのです。
測定者がサボる
そもそもデータが抜け/漏れる最大の原因として、データの測定者がサボるというものが挙げられます。
「んなバカな」と思われるでしょうが、これは本当によくあります。
私は今の会社が2社目なのですが、それぞれの職場の現場でこれを経験しております。
なぜこのような事が起きるのか?
それは、測定者がそのデータに重要性を感じていないからです。
・なぜそのデータが必要なのか
・測定したとして、実際にそのデータを見てくれるのか
このような疑問を測定者が抱くと、データを取ってくれなくなります。
そもそも、データ測定そのものには生産性がありません。
特に現場でものづくりをしながらデータの採取をする作業者の場合、データ採取の目的意識が希薄だと、
「こんなデータ取らなくても、製品は出来上がるし、時間がもったいないよ」
と思うのもある種必然であると言えます。
ただでさえ、現場の作業者は決められた時間内に、決められた数量製品をあげる事を課せられているので、いつ役に立つのかよく分からないものに時間を奪われたくないのです。
社内データを活用する3つの方法
このような状況下では社内データ分析が一筋縄ではいかないという事が、よく理解いただけたと思います。
それでは今度は、その社内データをどのように活用していくのか考えていきます。
1.層別分析で抜け/漏れを洗い出す
まず社内データを集めたら、層別分析をしましょう。
層別分析を実施すると、
・存在しない層はあるか
・データの抜け/漏れがあるか
が分かるようになります。
データはそのまま眺めていても、どこが抜けているのか、足りないのか、サッパリ分からないものです。
データを観察する意味でも初動ではまず、層別分析を実施するようにしましょう。
2.感覚データで補強する
層別分析する事で、何が足りないのか、もしくは何かしら違和感のようなものが挙がってきます。
違和感というのは、ばらつくはずのデータが何故か毎日、舞ロット同じ値を示しているとかそんなんです。
このような違和感や抜け/漏れが発覚した場合、現場にインタビューしましょう。
測定者の意見といった感覚データを使って、足りない箇所の裏取りやフォローを行うのです。
これを行うと、今のデータでどこまでが真実でどこからが間違っているのか明確になるので、正しい分析を行う事が出来ます。
この時のインタビューには様々な方法があります。
・ガチガチにアンケート用紙を作りこむ
・質問形式で行い、回答だけでなく挙動も観察する
・ある程度聞く内容だけ決めて、後はぶっつけ本番
どの方法が一概良いのかは分かりません。同じ現場でも、時と場合により最適な方法は異なってくることでしょう。
ただ一つ重要なのは、直接面談するという事です。
アンケート形式の場合、それを現場に丸投げでは嘘をつかれる可能性があります。
正直に答える事にメリットが無い以上、ただの紙に対して正直に答える義理がありません。
直接出向いて、本当に大切な案件であることを認識してもらいましょう。
3.検証実験を実施しよう
抜けているデータを感覚データで補強するのにも限界があります。
そのような場合は、抜け/漏れを補填する検証実験を行いましょう。
この場合のポイントは、自身でデータを取る、もしくは立ち合うという事です。
単にデータを取るのではなくて、
「なぜデータが抜けたのか」
「データを取るうえで負担はないのか」
という観点にも注意を払いながらデータを採取する事で、単にデータの補填をするだけでなく、今後抜けや漏れを無くすための改善案を出すヒントになります。
特に作業者がサボったことでデータが無い場合、サボるに至った原因というものがあります。
・実作業への圧迫
・複雑な作業性
といった、サボるに至る原因というものが、まず間違いなく存在すると思います。
「測定しない方が悪い」と考えを放棄するのではなく、常に
「どうしたら良くなるのか」
を常に意識して仕事をする事が大切です。
まとめ
今回は社内データの分析について、解説しました。
社内データの注意点としては
・分析を想定していない
・当初の分析予定と異なる必要なデータ
・測定者がサボる
という点でデータが抜け/漏れるということ。そして
・まずは層別分析
・感覚データで抜けと漏れを補填
・検証実験で抜けと漏れを補填
する事で、扱いの難しい社内データをうまく分析する事が出来ます。
社内のデータとはいえ、油断していると真実が見えない分析結果となってしまう可能性があり、結局、時間と労力と金を無駄にしてしまう事にもなりかねません。
重々注意して分析を行いましょう。
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