ばらつきは偶然に起こるのか?【分散の加法性の積み重ねです】

コラム

製造業は日夜ばらつきに苦しめられています。

開発も製造現場も品質管理も品質保証も生産管理も、そして営業も作り出した製品に関わる全ての部署が製品のばらつきに振り回されています。

このばらつきという奴は一体何者なのでしょうか。

統計においてばらつきは、正規分布を描く、偶然の産物かのように扱っている節があります。

偶然ばらつく。

それはさも神様がサイコロを振っているかのようです。

今回は、そんな製造業を苦しめる「ばらつき」について考えてみます。

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偶然とはなにか?

偶然とは、

何の因果関係もなく、予期しないことが起こること。

を言うそうです。

「そりゃそうだ。今更当たり前のことを言うなよ」

という声が聞こえてきそうですが、ちょっと待ってください。

そもそも何の原因もなしに、結果が生じるということは本当にあり得るのでしょうか。

本当に原因なしで結果が生じるというのであれば、サイコロを振った瞬間、サイコロが爆発する可能性だってあります。

爆発という現象は、火薬のような可燃物という原因があって初めて生じるはずです。

しかしながら、本当に結果に原因が不要であれば、このようなサイコロが突然爆発するという現象が起こっても不思議ではないはずです。

ですが、そのような完全に因果関係を無視するかのような現象は聞いたことがありません(量子力学の話は持ち出さないでくださいね)。

そのように考えると、語彙通りの意味での偶然というのは、あり得ないと考える方が自然です。

ここで先ほどの『ばらつきは偶然生じる』に話を返しますと、『偶然』というものはないのですから『ばらつきは偶然には生じない』となるはずです。

つまり、『ばらつきは偶然の反対→必然的に生じる』ということになります。

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ばらつきは小さな必然のつみかさね

ばらつきは必然的に生じます。

しかしながら、ばらつきを狙って起こすことは困難を極めます。

ばらつきを再現しろと言われたら、みなさん有無を言わさずに白旗を上げるでしょう。

必然的に生じるばらつき。しかし制御は出来ない。

一見矛盾するようにも思える対立ですが、別に不思議ではありません。

必然的でも制御が出来ないということは、珍しいものではないのです。

サイコロを振るとき、完全に同じ投げ方、力の入れ方、角度、風向きで投擲を再現出来ますか?

プロのディーラーでもまず無理です。

ですが、完全に同じ投げ方を再現出来れば、出目も完全に再現されます。

出目がばらつくという現象は、

・投げ方

・力の入れ方

・角度

・風向き

等々挙げれば数限りない、細かい必然によって決定されています。

それらが少しずつずれることで、出目が変化するのです。

つまり、我々が目にしているばらつきというものは、目に見えない小さな必然が積み重なった現象なのです。

これは、『分散の加法性』で説明可能です。

$$V^2=V_1^2+V_2^2+・・・+V_n^2$$

ばらつき同士は足し算的に積み重なっていくのです。

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ばらつきを分解する重要性

ばらつきは必然の積み重ねです。

その必然は一見するとすべて小さく見えて、対処のしようがないように見受けられます。

しかしながら、ばらつきを構成する必然のサイズも一様ではありません。

人間ではどうにも扱えない小さな必然に混ざって、制御可能な大きな必然も混じっています。

故に製造業がばらつきによるクレームを低減させるためには、ばらつきの構成要素を分解する必要があるのです。

分解することで、制御できそうな要素を抽出し最適条件を見出す。

その為の手法が、実験計画法だったり、品質工学だったりするわけです。

 

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