統計の”アドバイザー”はいらない

コラム

いきなりですが、質問です。

・1流の統計スキルを持った人が実務担当者にアドバイスする

・2流の統計スキルを実務担当者が有している

いずれが、より生産性が高い、もしくは統計の知識をアウトプットに活かせると思いますか?

皆それぞれ考えがあると思いますが、

私個人は後者の

「2流の統計スキルを実務担当者が有している」

だと思います。

今回は、統計学が社会にどう関わるべきか、サラリーマンが統計学にどう関わるべきかの考えをつらつらと述べさせていただきたいと思います。

アドバイスは100%は伝わらない

統計学の知識はそれ単品だと、役には立ちません。

実際の現象、その現象に対しての知識を統計的分析の結果と組み合わせることで初めて意思決定をするに足りる回答が得られるのです。

例えば、ある部品の摩擦係数管理をしており、頻繁に管理値から外れたとします。

現場や現象について何も知らない統計学者にデータを渡して、分析を依頼してもおそらく

「摩擦係数の標準偏差が大きくなっている」

とか

「4Mに層別してみると、特定の機械で不良率が高い」

といった、嘘ではないけどわざわざ統計を持ち出さなくても良さそうな”薄い“回答しか返ってこないでしょう。

そんなもの、履歴を調べれば分かるわい!!的な。身に覚え有りません?

なぜこのような事になるのか?

というのも、現場や現象に対して一定の知識、経験がないとどこを調査すればいいのか見当がつかないのです。

なので表面的な分析や調査しか出来ないという事態に陥りやすく、QC手法や統計学に精通した品管が現場の分析をしても、底の浅い結果しか得られないということになるのです。

ハイこれ、前職の私です。

100伝えて1伝わるよりも、30を学んで20を使える方が良い

では、統計なんて使えなくても良いのかと言われたら、決してそんなことはありません。

例えば

「Aという操作とBという操作で摩擦係数を作りこむ」

このことをライン監督者が知っていて、その上多少統計に精通していると、

「摩擦係数がAとBどちらに対して相関性が高いのか」

という観点に即座に思い至り分析を実施することが出来るでしょう。

ここで操作Aと摩擦係数に相関性が見られた場合、迷いなく操作A周辺の調査に集中して原因を突き止めることが出来るはずです。

特に製造、研究開発、品質管理など直接計量値を扱う部署においては、それほど難しい統計の知識は必要ありません。

標準偏差相関を知っているだけでも大分違いますし、検定推定を習得すればかなりの領域をカバー出来るはずです。

しかしながら

「統計のアドバイザーと実務担当者で情報を交換しながら仕事を遂行すれば良いではないか」

と反論が帰ってきそうなものですが、実はこれ、結構難しいです。

統計に使われる単語は、聞きなれないものが多く、知らない人が

“標準偏差”、”有意差”、”相関関係”

といった単語で説明されてもピンとこないものですし、逆に製造や技術的な専門用語は門外漢であろう統計のアドバイザーには理解しがたいものであるはずです。

このコミュニケーションの祖語は致命的で、お互いに理解しづらいので

「何回同じことを説明すれば気が済むんだッ!」

と揉めること必定です。

故に実務担当者が少しでも統計の知識を持っている場合の方が、統計がアウトプット(=社会への貢献)を果たすだろうと私は思うのです。

故に重要なのは、実務に活かせそうな統計を知る場を増やすことだと思っています。

このサイトもそれを目的として運営しているつもりです。

このサイトを見て

「ふ~ん、そうなんだ」

イメージを掴んで頂いて、実際に書籍やセミナー等で本格的に学び、とりあえず実務に活かしてみる

というプロセスを踏んで頂ければ「仕事で活かせる統計学」を手早く習得できるはずです。

今後もそのような統計学の浸透の一助になれるように努めていきますので、何卒よろしくお願いいたします。

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