前回は、カイ二乗分布を使った分散(つまり”ばらつき”)の検定方法について解説しました。
「カイ二乗分布って、ばらつきの検定しか出来ない?F検定で十分じゃない?」
いえいえ、カイ二乗分布の働きどころはそこだけじゃありません。
分散の推定、それを利用した標準偏差のサンプルサイズの導出、そして適合度の検定など出来る事は非常に多いです。
という事で、今回は適合度の検定について、解説いたします。
今回はこちらの本を元に解説しています。
適合度の検定とは?
分布に対しての適合ぶりをみる検定
さて、いきなり出てきた適合度という単語。
これは一体、何に対しての適合を言っているのか?
ここでいう適合というのは、経験的に観察された分布(サンプリングデータが描く分布)と、特定の分布がよく一致しているかを指しています。
つまり分布と分布の適合です。
扱う問題としては、例えばある実験結果の分布は、想定した分布に一致しているか。
・一致していない場合は想定が間違えているか、
・それとも一致を妨げている数値には実験中異常があったか、
・想定していない交互作用でもあったのか。
以上のような疑問がわいて、次の実験、検証につながっていったりします。
あるいはある地方の自動車メーカー別の市場シェアは、実際に調査した駐車場での観察結果と一致しているか。
・シェアの情報は実は間違っているかも?
・駐車場の選択が間違っているかも(旅行者がよく止める駐車場だったとか)?
など、市場情報の裏取りにも利用出来たりもします。
分布の適合と聞くと、何に使えるか一見分かりづらいですが、要は想定が本当に正しいのかを確認するための手法と捉えれば、使い道はかなりありそうですね。
それでは、実際の検討方法について一緒に見ていきましょう。
前提条件
経験的な分布と想定している分布が、ともに度数分布で表されているとして、各級の度数をfk及びfk*(k=1,2,…,m)とした場合、
$$x^2=\sum_{k=1}^{m}{[\frac{(f_k-f_k^*)^2}{f_k^*}]}$$
は自由度m-1のカイ二乗分布します。
これはヒストグラムの各級のバーの高さが、すべて一致したらfk-fk*は0になるということで、つまり分布の適合率が高いと、x2は小さくなるということを示しています。
検定方法
基本的には、先ほどの前提条件を利用して算出したx2を使って、以前紹介した分散の検定と同様の進め方をすればいいだけです。
検定についてご存じない方は、こちらを先にご覧になっていただくと、理解が深まると思います。
これだけだと、ピンと来ないと思いますので、例題で考えてみましょう。
自動車メーカーの市場シェアで考えてみます。
自動車メーカー、A、B、C、その他があるとします。それぞれのある地方での市場シェアはA社35%、B社30%、C社20%、その他15%とされています。
さてその地方の駐車場に駐車してある車380台について調べたところ、A社110台、B社123台、C社95台、その他52台でした。
ここで駐車場の情報を元に、市場シェアが正しいか検討するとします。
まずは380台が実際に市場シェア通りに分かれたとすると
以上のような表の関係になります。
ここで帰無仮説は、市場シェアと駐車場の分布は一致しているです。
有意水準は5%とします。
次にx02を算出します。
$$x^2_0=\frac{(110-133)^2}{133}+\frac{(123-114)^2}{114}+\frac{(95-76)^2}{76}+\frac{(52-57)^2}{57}≒9.88$$
となります。
そして自由度は4-1=3となります。
カイ二乗分布表の自由度3、有意水準α=0.05の交点はx2=7.81になります。
そして9.88>7.81と、有意水準のx2より、算出したx02は大きいので
帰無仮説「市場シェアと駐車場の分布は一致している」は正しくないと判断されます。
つまり帰無仮説は棄却され、
「市場シェアは正しくない」
という対立仮説が採択されます。
以上が適合度の検定の一連の流れになります。
まとめ
この検定は集計値になら、どんなデータにも適用出来るので、量的変数だけでなく、質的変数にも適用出来ます。
通常の検定では、質的変数への適用が出来ないので、これを使いこなせれば、特にマーケティングにおいて大きな力を発揮します。
とりあえず、試しに自分の持っているデータが仮説と合致するのか検証してみましょう。
驚くべき結果が待ち受けているかもしれません。
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