製品開発に必要な統計学の知識とは?【統計を鵜呑みにするな!】

コラム

私は今の勤め先では、製品開発を担当しています。

特に最近は、統計学を利用する事で、効率的な製品開発を心がけています。

そんな中

「それほど高度な統計は不要だな」

「統計を過信するのはダメだな」

という思いを良く抱きます。

今回はそんな実体験に基づく、製品開発における統計学との付き合い方を紹介いたします。

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製品開発に必要な統計の知識はどのくらい?

基本的な分析手法でOK

統計学を勉強していると「どのくらいの知識が実践に役立つのだろう」と思う事が多々あると思います。

これに関してですが、実際の話入門書に乗っているレベルで十分です。

ここでの基本的なレベルというのは、

標準偏差

差の検定(平均、分散)

相関(可視化した散布図)

多元配置分散分析

あたりです。

というのも、何かを開発するにあたり基本的に実験をするわけですが、実験する事で知りたいことは、

・差が有るかどうか(=検定)

・2つの要因に関係があるかどうか(=相関)

・アウトプットに影響を与えるインプットは何か(=分散分析)

がメインになるからです。そしてその分析を支えるのが、”ばらつき”の情報(=標準偏差)なのです。

もちろん、様々な理由で分析がうまく機能しないという可能性はありますから、標準偏差の代替代表値(=四分位偏差)や、代わりの検定手法(=マン・ホイットニーのU検定)を知っておくに越したことはありません。

しかしながら、小難しい手法を沢山覚えるよりも、基本的な手法を使えるように実験手法を工夫し、数をこなす方が得られる情報量は多いですし、統計リテラシーも向上します。

因子分析で複数の要素から真の原因系を探るよりも、どのような実験をしたら直に原因系を検出できるか考えた方がずっと効果的です。

これらの基本的な手法に関しては、以下の本がおすすめです。

統計学の内容がかなり広い範囲で網羅されていますし、更に深い勉強をしたいためのおススメの文献もとりあげているので、一冊置いておくと便利です。

評価方法が大切

製品開発において統計学を活用する上で大切なのは、分析対象の精度です。

せっかく分析をするというのに、分析対象のデータの精度が悪ければ良い結果は得られません。

いくら料理の腕が良くても材料が悪ければ、美味しくならないのです。

例えば、傷がつきにくいという物性を持たせるために、様々な要因(表面の硬さや復元性など)を振って傷を評価するとします。

このときに、傷の評価が目視による5段階評価であった場合おそらく分析はうまくいきません。

なぜならば、5段階の各数字の間隔に特に意味がない(順位尺度)上に、人の目はその日の体調や「こうあってほしい」という恣意的な情報も入り込む(順序が入れ替わるリスク)可能性があるからです。

それよりかは、検査機などで陰影を二値化してその”ばらつき”をアウトプットするなどして、比率尺度か間隔尺度したり、人の不確定要素を排除するなどしたデータにした方が、統計学がうまく適用できる可能性が上がります。

このように製品開発において、まず大切なのはどのようにしてアウトプットを精度の高い数字で捉えるかという事なのです。

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統計との付き合い方

鵜呑みにせず、疑いましょう

統計を勉強だけしていて、実践していないと陥ってしまうのですが、統計の結果は数字の並びによって導かれるので、現実と乖離している場合があります。

どういうことかと言いますと、例えば従来品より速度の速いチョロQの開発案件があるとします。

当然開発におけるメインの指標は、速度になります。

そして、開発、検討して新チョロQ1号が出来たので実際に走らせてみました。

旧チョロQが平均15km/hであるのに対して、新チョロQは平均15.3km/hでした。

どう考えても、大した差とは思えません。速度2%アップなんて何のアピールにもなりません。

しかしながら、測定データの標準偏差とサンプルサイズによっては『有意差あり』と判断される可能性は十分にあります。

このように、統計の結果と製品の現実とはいつでも一致するとは限りません。

というより、うまく実験や分析方法を設計しないとうまくいかない事の方が多いです。

故に、実験後の分析において、なぜそのような分析結果になったのか、統計の内容をよくよく吟味する必要があります。

ちなみに、先ほどのチョロQの場合は15km/hではなく例えば倍の30km/hを目標として、その数字を上回っているかを検定するという方法を取るべきでした。

現物を中心に考えましょう

統計は所詮数字からのみ導かれる結果に過ぎません。

開発対象である現物が事実です。

一面的な測定結果だけではなく、なぜそのような結果になるのか。

顕微鏡で観察したり、成分を分析するなど多面的に解析すべきです。

これは研究開発を実施している人からすれば、当たり前の話だとは思うのですが、にわかに統計学を利用していると、ついついこの事実を忘れてしまいます。

統計学は飽くまで、製品を開発する上でのヒントを与えてくれるツールの一つくらいに捉えて付き合っていった方がうまくいくと思います。

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まとめ

製品開発において、使用する統計学はそれほど高度なものは必要ありません。

それよりも、製品に関連する専門知識やそれに根差した最適な評価方法を常に探り、良質なアウトプットを得る事を重要視した方が良いです。

良質なアウトプットが得られれば、統計の手法はきっと良質な分析結果をあなたに提示してくれるはずです。

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