開発と製造が揉める理由とは?【鍵は分散の加法性とロバスト性?】

品質工学

会社には様々な部署が存在します。

それぞれの部署が重要な役割を担っており、どこの部署が優れているとかいうのは無いのですが、各部署においてそれぞれ独自の目的意識を持って一緒に仕事をしているために、部署間同士でどうしても相性が悪く、揉めたりする事ってかなり多いです。

営業と開発

品管と製造

そして、

開発製造

真剣に仕事に取り組むほど、相性の悪さというのは浮き彫りになってくるものです。

この揉め事は大抵仕事の流れ

上流 vs 下流

で生じます。

開発と製造であれば、

開発:モノを設計する

製造:設計されたモノを大量生産する

と言った感じです。

そして基本的には上流側に問題があるために、揉め事が生じます。

今回は統計的な視点から、この部署間も揉め事に切り込んでいきます。

要約すれば、

『分散の加法性とロバスト性の軽視により、設計段階で低品質が決定する』

のが原因となります。

何を言っているか分からないと思いますが、これから読み進めていっていただけたら理解頂けるとものと思います。

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開発と製造の求めるものとは?

まずは開発と製造それぞれが何を至上とするのか、考えてみましょう。

ポイントは各部署が何を品質と考えているかです。

開発はスペックの高いものを作りたい

開発は高品質な製品を作りたがっています。

昨今良いものを作れば売れる時代ではないと言われますが、それでも設計する側からすれば

良い品質のものを作りたい。」

のです。これは本能みたいなものです。

さてここで言う開発者の品質というものは、性能、スペックを指している事が多いです。

お客さんに高い性能のものをお届けしたい、高い性能が高い品質なんだと思っている人が多いです。

少なくとも私自身、頭では違うと否定していながら、根っこでは高性能な製品が良い製品という考えが染みついています。

製造現場は高い歩留まりの製品を作りたい

製造の目的は大量にモノを生産するという事です。

時間というものが限られているので、大量にモノを生産するためには、

・生産速度

・ストップしないこと

・高い歩留(良品率のことです。ぶどまりと読みます)

が重要になってきます。

故に製造現場からしたら、品質というのは、不良が出ない事を指すのです。

不良が出てしまうと、捨てる製品が増えます。

折角100個作っても80個しか採用されなければ、大量に生産するという命題を果たせないのです。

さらに作りやすさも品質に含まれます。

立ち上げ条件が厳しすぎていつまでも生産に入れないと時間を無駄にしてしまいますし、ちょっとしたことで生産がストップするような繊細な製品は、製造現場としてはありがたくない製品、つまり低品質な製品になります。

ちなみに

・作りにくい製品=ちょっとしたことで不良が出る

製品になりますので、結局のところ不良が出にくい事良い品質の製品という事になります。

品質は設計で決定する

この2つの品質のいずれが重要であるかは今言及しませんが、一つ確実に言える事は、

性能も不良率も、製品にまつわる品質は設計で決定する

ということです。

製造現場では良く歩留向上の活動が行われます。

段取り、加工条件、検査規格を調整する事で、不良率を下げにいきますが、実はこれらの活動で下げる事が出来る不良率には限度があります。

実は設計段階で、潜在的な歩留が80%となってしまったら、現場の努力ではマックス80%の歩留まりしか実現出来ないのです。

新規設備導入で不良率が改善する事もありますが、それはその製品が設計段階でそのポテンシャルを有していたに過ぎないのです。

もちろん、そのポテンシャルをあらかじめ知ることは難しいです。

というかまず分からないでしょう。

しかしながら、新規製品がこれまでの生産方法で生産すると、やけに条件が厳しい、作りづらい場合は、そのポテンシャルは極めて低い可能性があります。

そして、その設計を決めるのは開発部門なのです。

開発と製造が揉めるのは、品質の考えがぶつかる時、つまり

開発:「これは今までにないほど高性能な製品なんだ。作りにくくても何とか作ってくれ」

製造:「そんな事言われたって、こんな厳しい規格幅じゃないと作れないとか、無理ゲーだわ」

という議論になる時なのですが、実は設計段階で難易度が決定しているので、功罪は開発部門にあるという事になるのです。

故に開発部門には、高性能だけではなく、低不良率を目指して設計する必要が出てくるのですが、実はこれがかなり難しいのです。

次からは低不良率を目指したモノづくりが、なぜ難しいのか考えていきましょう。

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設計段階で品質が悪化する理由とは?

ばらつきは累積する

不良率とは、各スペックがばらつくことで発生します。

ある寸法に注目しても、Aという製品は大きいのに、Bという製品は小さいとかいう事がランダムで発生します。

不良率を下げるには、ばらつきを小さくすることが肝要なのです。

しかしながら、ばらつきを小さくするのは非常に難しいのです。

特にスペック、性能を追いかけていくと余計に難しくなっていきます。

これは統計学的視点で説明出来ます。

理由は分散の加法性にあるのです。

分散の加法性のために以下の2つの性質が発生してしまいます。

①条件を増やすほど、スペック(平均値)を調整しやすくなる

②条件を増やすほど、潜在的なばらつき(分散)は累積していく

①ですが、これはウイスキーの作り方で良く使われいています。

苦い原酒、甘い原酒、香り高い原酒、様々な尖った性質を持つ原酒を混ぜ合わせる事で、狙った味のウイスキーをブレンドしていきます。

開発という活動は、基本的に様々なものを混ぜ合わせて新しい性能、狙った性能を作り出す活動です。全く新しいものを作るというのとは違うのです。

このように良い性能を求めると、足したり引いたりするよりも、どんどん際限なく足していく方向に行ってしまいます。

これは分散の加法性により、条件が増えるほど、平均値のばらつきが減っていくという性質がある為なのです。

式で表すとこんな感じになります。

$$\overline{x}=\frac{1}{n}x_1+\frac{1}{n}x_2+\frac{1}{n}x_3…$$

x1,x2,x3はそれぞれ同じばらつきσをとります。

$$V_{\overline{x}}=(\frac{1}{n})^2\sigma^2+(\frac{1}{n})^2\sigma^2+(\frac{1}{n})^2\sigma^2…=(\frac{n}{n^2})\sigma^2=(\frac{1}{n})\sigma^2$$

このように平均値のばらつきは、n(つまり条件)が増えるほど減っていくのです。

一方②ですが、これは製品個々のばらつきが条件が増えるほどに増大化していくという事です。

分散は条件が増えるほどに足し算的に増えていきます。

これは以下の式で説明されます。

$$V=V_{x_1}+V_{x_2}+V_{x_3}…$$

①と②を総合すると、

条件を増やすほど、スペック(=平均値)は調整しやすいが製品個々の品質(=分散)は悪化しやすい

という事が言えるのです。

先述したように、開発は高スペック=正義と考えがちです。

故に、高スペックが出せるならどんどん条件を足していってしまいます。

その方が簡単だからです。

しかしながら、条件を足すほどに製品の潜在的なばらつきリスクは増大していき、ちょっとしたことで不良が発生しやすくなるのです。

つまり開発が性能を追いかけるほどに不良のリスクが増大し、製造が迷惑してキレるという訳なのです。

分散の加法性に関しては、詳しくは以下の記事を読んでみて下さい。

ロバスト性の検証が難しい

基本的に不良の原因を設計段階で洗い出すことは、極めて難しいです。

FMEAといった手法も存在しますが、それも過去発生した不良事案が発想源泉になっているのです。

つまり、今までに起きたことが無い不良については、予想する事が出来ないのです。

ユーザーというのは本当に予想外の製品の使い方をします。

そもそも取扱説明書を読むことも稀です。

あなたは買ってきたテレビの取説を読みますか?

私は読まないです。

なので製品には、どんな不良にも対応できる柔軟性よりも、どんな使用方法にも耐えうる頑健性が求められるのです。

全ての使い方を想定するのではなく、雑に扱われてもビクともしない製品を作ろうという発想です。

この頑健性をロバスト性とも良い、それを狙って開発する手法をタグチメソッドと言います。

じゃあこのタグチメソッドに従って作れば良いのだなという話になりそうですが、そうは問屋が卸さない。

かなり難しいのです。

詳細は別記事参照なのですが、

・アウトプットは加法性が無いといけない

・直交表、分散分析、SN比を使用する

・経験則に反する考え方が多く、実使用や上司への説得が難しい。

など、学術的にも難易度が高く、これを使いこなせる開発者は稀でしょう(私も今色々試している最中・・・)。

難易度が高いという事は、手を出しにくいという事。

日々タイトなスケジュールで開発を進めていかなければならない中で、どうしても楽な方、つまり条件を単に足してスペックを追い求める方に行ってしまうという事。

これも設計段階で製造が嫌がる低品質な製品が作られる理由なわけなのです。

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まとめ

開発と製造が揉めるのは、品質の見解の相違。

そして、品質は設計で作りこまれるので、実は責任は開発側にあるという事実。

そして分散の加法性ロバスト性を持った製品開発の難易度の高さが、低品質な製品を生み出す温床となっている事実。

以上の理由で開発と製造は揉めるという事なのです。

これを解決するためには、やはりタグチメソッドを導入する事が大切なのです。

そして難易度がとても高いので、どれだけその方法を開発の文化に落とし込んでいくのか。

これが課題になってくるという訳です。

まずは、直交表+分散分析とクロスロジックツリーから勉強してみて下さい。

そこが飲み込めていくと、タグチメソッドへの一歩が踏み出せるはずです。

 

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