『技術者の意地』を読みました。

品質工学

『技術者の意地』は品質クレームが尽きない中小企業が、現状を打開するためにタグチメソット(品質工学)を導入し、見事解決するまでを描いた小説仕立ての解説書です。

技術者の意地―読むだけでわかる品質工学

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今回はこちらのレビューをさせて頂きます。

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タグチメソッドって何?

そもそもタグチメソッドとはどんな手法か、ご存知ない方も多いと思いますので、まずはそちらを解説します。

簡単に言うと「いかに、ばらつきを無くすか」を追及する手法です。

一般的に製造業ではばらつきを管理するのは、現場であるとされがちですが、タグチメソッドでは設計(つまり開発段階)に注目します。

製品は様々な条件を組み合わせることで構築されます。

その条件によっては、表面的には分からない潜在的なばらつき(見えない不良)が内包されてしまいます。

設計段階で内包された見えない不良は、現場では取り除くことが出来ません。生産時には発生せず、市場に出てから晒される様々な外部要因によって引き起こされるからです。

タグチメソッドでは、これら見えない不良に対して個々に取り組むのではなく、設計段階で技術者が様々な条件振り試験を実施し、ばらつきがない頑健な条件を見出すことを旨とします。

しかしこのタグチメソッド、中々活用することが難しいのです。

難しいというより、何をしたらいいか分かりづらいと言った方が早いです。

用いる用語も、SN比、感度など独自のものが多くこれもタグチメソッドの活用を困難にしている原因です。

そんなタグチメソッドを扱うイメージを持つうえでこの本は最適と言えるでしょう。

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どんな内容?

あらすじですが、

中小企業の技術者矢吹は湿度の感度センサーの開発を携わっている。この感度センサーはセンサー部は湿気に反応するためにある種の不安定性を持たせているのだが、その為に反応してほしくない湿気以外の要因(ゴミ、汚れ)にも反応してしまい、その為の品質クレームが後を絶たない。

クレームが常態化し、技術的に手を尽くし、八方ふさがりのこの状況を打開するために、十文字メソッド(劇中でのタグチメソッド)の導入に望みをかける。

大体こんな感じです。

この悩みは、製品がある程度成熟した中小企業にはとてもよくある事例です。

実際に私が勤めている会社もそんな感じです。読みながら、「あ~これあるなぁ」と何回唸ったことか。

 

さて、この”技術者の意地”では実は手法的な紹介は殆どありません。

せいぜいSN比と損失関数くらいです。

本書の狙いはそのような小手先のものではなく、

『技術の本質とは何か』

を問いただすものです。

 

長年自社製品の開発に携わっていると、書物だけでは得られない知識も蓄積し自分たちはこの分野のことなら何でも知っているという自負心が芽生えてきます。

しかしながら、その知識は真に技術の本質をついたものなのでしょうか。

実際には、製品の最適条件のみに注目しているということは無いでしょうか?

本書もといタグチメソッドでは、設計において重要なのは最適条件ではなく、条件を変動させた場合にどのようにスペックやばらつきが変わるかを掴むことが重要であると訴えています。

極端に条件を振った試験を実施し、性能とばらつきの変動を捉えることが出来れば、あとはその条件を組み合わせるだけで最適条件やスペック変更が可能となります。

更に条件振りをして得られたデータから、「なぜそうなるのか」という理論モデルを考えることで、より製品に対する知識が深まります。

主人公の矢吹も最初は技術を表面的に捉えた典型的中小企業の技術者でした。

ですが、八方ふさがりの現状を打開したいという強い思い。

そして妻との何気ない会話で見えてきた『見せかけの矛盾』という妄想。

それらをモチベーションとし、その意識はどんどん改革され、次第に会社全体の倦怠を吹き飛ばす大きな風となっていきます。

 

登場人物は皆人間臭いために感情移入がしやすく、また平易な文章で書かれているために非常に読みやすいため、読み物としても、啓蒙書としても面白いです。

中小企業にお勤めの方なら特に「コレ、うちじゃん」と言ってしまうような場面が数多く出てきます。

今まさに技術が頭打ちになり、クレームに思い悩んでいるなら、一読の価値ありです。

(出来ればこの本を読み終わり、モチベーションとイメージが高まった状態でタグチメソッドの勉強をされると尚一層効果が高くなると思います)

品質工学
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