新聞ではよく「前年比」や「前月比」等様々な比較の仕方で利益率や物価指数の上下に一喜一憂する記事が載っています。
また、会社においても「前年比」や「前月比」で売り上げや利益の上下に一喜一憂します。
しかしこの「前年比」や「前月比」は使うことそのものは問題ないのですが、使い方を誤ると間違った認識を持ってしまいますし、ひいては誤ったアクションに繋がる可能性があります。
今回は統計ではありませんが、「データの扱い方」として非常に重要な問題でもありますので、この「前年比」や「前月比」の扱い方について考えてみたいと思います。
前提条件は同じですか?
まず気を付けることは前年(前月)の今頃は今と同じ状態だったかということです。
例えば冬服の売り上げについて、前年比と比べて増加したとします。
このデータを見て「営業戦略が当たった」と即座に手放しで喜んではいけません。
まずは前年と今年の今日は同じ環境だったのかを考慮する必要があります。
例えば今年は例年に類を見ない寒波に襲われたため、常に気温が低かった。
という場合、ただ単に寒かったために服の売り上げが上がったという可能性が出てきます。
気温だけでなく、流行、購買層、人口比率など前年と今年では様々な変動要因が隠れている可能性があります。
当然すべてを同一にすることは出来ませんが、変動要因をあらかじめ挙げておけば、層に分類して分析することが出来ます。
層別分析に分散分析を導入すれば、変動に起因する大きな要因を見出すことも出来るかもしれません。
ただ単に前年比を使うのではなく、前年と今年の間に横たわる様々変動要因を考察することで、より確かなアクション案が浮かんでくるはずです。
前後関係は把握出来ていますか?
新聞やテレビでは日々色々な経済情報が発信され、我々一般市民を「好景気だ」「不景気だ」と一喜一憂させます。
しかしながら、これらの情報は少しトリックがあります。
例えば
「米消費者物価、1月0.7%低下」
「1月の全国(日本)消費者物価2.2%上昇」
この情報をそのまま受け取ると「アメリカは物価が下がっている」「日本は物価が上がっている」という受け取り方をされるかもしれません。
少なくともテレビでこれらのニュースが発信されれば、コメンテーターはそのようなコメントをする可能性は高いでしょう。
しかしながら、これら二つの情報は前提条件が異なるのです。
米消費者物価は「前月比」
全国消費者物価は「前年比」
なのです。つまり真実は
米国は前月(12月)に比べて物価が0.7%低下
日本は前年1月に比べて物価が2.2%上昇なのです。
つまりこれだけの情報では、単純に比較することは出来ないのです。
ですが、世間ではこのようなデータの発信のされ方は普通に行われています。おそらく意図的なものもあると思います。
大切なのはデータの前後関係(比較対象)を正しく調査し、捉えることです。
情報を集めるときは、セカンダリーデータを集めることもあります。
他人が集めてまとめたデータでは、このような「ワナ」が待ち受けている可能性があります。
故にデータに目を通す際には、前後関係や比較対象が何なのかを正しく把握するように心がけましょう。
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